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​新しい句集のご紹介

 

 

2冊とも​に非売品ですが、いくつかの素敵な句をご紹介します。

 

 

「だまし絵の階段」                大川アツ子               令和4年3月

 

社:層雲

女性の素直な情緒的感性の光る句が並ぶ句集。

ピアニッシモから始まる春の光りの雫

 春を歩くと、武二の「空がめぶいている」の句が思われる。春の青い空、しめりのある空になってゆく様はまさに生気を含んだ空の芽吹きだと感じる。二つの句で、男性の句の表現、女性の句の表現の行き方の違いが、くっきりと浮かび上がっている。この句は女性の、痒い所に手が届く、優しく細やかな感性の春の佳句であると思う。

 映画の半券がポケットにあるビルの夕映え

 祈り かわいた土に涙の雫こぼれる

 遠くのさくら近くのさくら胸のさくら

 月に呼ばれて騙し絵の階段をのぼる

 ひとり影ふみする少女の夕やけこやけ

                                   (佐瀬風井梧記)

 

 

 

 

 

 

「自由律俳句句集 ふりむいたねこ」 吉多紀彦著 ぎんなん叢書3 喜怒哀楽社   令和3年7月

 

結社:青穂、ぎんなん

作者の句は自由律俳句の教科書といえる。

作者は、生活を各章に分け各章ごとに年代順に並べる。自由律俳句は年代順に並べるのが一般的であるが、季題別に並べる定型律俳句の要素を類別という形で句集にした。この試みの結果は成功している、作者の人生並びに生活を自然に俯瞰する句集になっているように思う。

   

湯豆腐に逃げられるほど酔うたか

隣の寝息の中で眠る

洗濯機回ってこの家の鼓動

輪ゴムの主張 落ちても正円

ふるさとのやまなみふとんのかたち

受話器置く手の中にまだ母の声

                                (佐瀬風井梧記)

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